スケッチで思考は変わるか。2ヶ月間、毎日デッサンしてみた。

スケッチで思考は変わるか。2ヶ月間、毎日デッサンしてみた。

本ブログで紹介する私の最初の実験は、「2ヶ月間毎日デッサンしてみる」というものです。

実験のきっかけ

私がこの実験をしてみようと思ったきっかけは、元ホンダの石原信行さんの考えに触れたことです。

石原さんは著作や講演の中で、「デッサンをすることがアイデアを生む思考に役立つ」ことを説いています。

人の脳には、言語や数字などをあつかう左脳的な思考と、イメージや直感をあつかう右脳的な思考がある。だが、人はよく左脳的な思考ばかりを使ってしまう。

スケッチをすることは右脳的な思考を活性化し、両方の脳を使うことでアイデアが生まれる。

これが、私の理解したところです。実をいうと、私もメーカーでの研究職といった仕事をしています。そのため、同じ職種の石原さんの考えに納得するところがありました。

「デッサンをすることで、本当に思考が変わり、アイデアを生み出せるようになるのか?」アイデアに生きることをかかげる私にとって、これは試すべきことのひとつだと感じました。

そこで、この実験を始めることにしました。

やってみたこと

具体的に私が実践したことは、以下のことです。

  • 期間 2026年3月1日〜4月30日
  • 日数 61日(今回は連続で実施しました。)
  • 内容 1日10分以上、身の回りにあるものを1つデッサンする。

使用したのは、主にB6サイズのスケッチブックと、0.9mmのシャープペンシル(2B)です。

2ヶ月間の記録

結論からいうと、なんとか2ヶ月間1日も欠かさず絵を描くことができました。描いた絵をいくつかピックアップしながら、過程や気づきについて記していきます。

1~10日目

スケッチブックとシャープペンシルを揃え、いざ描きはじめました。

こうして、「絵を描くために絵を描く」という時間は、学生時代の美術のクラス以来でした。そう上手くは描けないだろうとも思っていました。

しかし、個人的な感想としては、たった10分でもきちんと紙に向き合い真剣に描けば、それっぽい絵になるな、ということでした。

1日目、スマートウォッチ。
1日目、スマートウォッチ。

まずは、自分がいつも使っている、文房具や電子機器なんかを描きはじめました。

9日目、パソコンのマウス。
9日目、パソコンのマウス。

11~20日目

引き続き、身の回りのものをひとつひとつ描いていきました。ささいなことですが、毎日絵を描く習慣のいいところに気がつきました。それは、描いたものが1枚ずつスケッチブックに溜まっていく、ということです。自分の描いたページの厚みが増していくのは、ささやかながら達成感があり、私はこの習慣に好感をもちはじめていました。

12日目、メモ帳。
12日目、メモ帳。

また、とある休日にあることを思いつきました。外に出かけてデッサンしたらどうだろう、ということです。そこで、空港の展望デッキという場所を選び、すこし緊張しながらも絵を描きました。

20日目、飛行機。
20日目、飛行機。

スマホやカメラで写真を撮る人たちの中、1人こそこそと描きました。この実験をはじめる前までは、私もスマホを向けていたはずです。面倒で時間のかかる行動ですが、それゆえに、より目の前のものを観察できているという手応えがありました。

21~30日目

引き続き、たんたんと描きました。毎日、自分の周りにあるものを適当に選んで描くのですが、この頃になると、私が好んで描いているものがありました。それが、靴です。

24日目、ランニングシューズ。
24日目、ランニングシューズ。

もともと靴というものに凝っているわけではありません。ただ、個人的な感想ですが、靴というものは描いていて楽しいような姿をしていることに気づきました。

足を入れるという意図のある立体的な構造。表面にはロゴや模様。シンプルすぎず、複雑すぎず、描いてみると妙にさまになる。靴というのは、そんな姿をしているのです。

靴にこのような美点があったことに、初めて気がつきました。

26日目、スニーカー。
26日目、スニーカー。

31~40日目

この頃になると、わずかながら生活の中でもある変化を感じていました。それは、1日10分のデッサンの時間以外にも、絵を描くことが増えたことです。それは、絵を描くということへの抵抗が、だいぶ小さくなったからだと思います。

記事には載せていませんが、仕事の合間に、自分が扱うものをノートにスケッチすることもありました。そうすることで、その形状や姿についてよりくわしく観察し、記憶にも残りやすいと感じました。

32日目、プッシュアップバー。
32日目、プッシュアップバー。
39日目、キャップ。
39日目、キャップ。※日付は書き間違い

41~50日目

引き続き、たんたんと描きました。まだ描いていないものを、引き出しから掘り出すなどもしながら。

49日目、マウスウォッシュ。
49日目、マウスウォッシュ。

振り返ってみると、この期間については、特筆するような気づきや変化があまりなかったように思います。描くことに慣れ、生活の一部になっているような感覚かもしれません。

50日目、マグ。
50日目、マグ。

51~61日目

もうじき、目標としていた60日目。そんなタイミングでしたが、私はデッサンにおいて1つの変化を試みました。なんと、色鉛筆を買いました。

絵を描くことにおいて一歩次のステージに進みたい、という気持ちが生まれきたからだと思います。

購入したのは、36色入りの三菱鉛筆です。およそ2ヶ月絵を描いてきたことで、自分は今後この色鉛筆をきちんと使うだろうという自信もわき、購入に踏みきりました。

57日目、マグ。この日だけ色鉛筆を使用。
56日目、マグ。この日だけ色鉛筆を使用。

ひとまず1日だけ、色鉛筆を使ってデッサンしました。自分の知っている色の名前が思った以上に少ないことも発見でした。

こうして、2ヶ月毎日デッサンするという実験を、無事に終えました。

61日目、外国の硬貨。
61日目、外国の硬貨。

実験の結果

この2ヶ月の実験を振り返り、1番の目的にしていたことについて書きたいと思います。つまり、「デッサンをすることでよりアイデアを生み出せるようになったか」ということです。

結論からいうと、それはまだわかりません。しかし、そうなりそうな予感がある、というのが実際の感想です。

というのも、アイデアにいたらないまでも、実験を通して2つの変化を感じているからです。

① 観察の解像度が上がる。

絵を描くことにより、少なくとも絵を描いている間は、その対象についていつも以上に詳しく、そして別の角度から観察するようになりました。

たとえば、「自分の腕時計のベルトに開いている穴の数はいくつか」、「飛行機の翼の根元はどう胴体についているのか」といったことに、私はデッサンをしながら初めて知りました。

いつもは削ぎ落としていた情報が、絵を描く上ではしばしば必要になりました。そういった部分を観察することは、目の前のものを「いつもとは別のやり方で理解している」という感覚でした。

② 記録する上で、絵を描くという選択肢が増えた

2ヶ月毎日絵を描いたことで、絵を描くことへの抵抗がずっと小さくなりました。その結果、記録や表現方法の選択肢がひとつ増えたと感じています。

実際に、先日ある場所を見学した際、写真を撮ることができず、とっさに簡単なスケッチでメモ帳に記録したことがありました。以前の自分であれば、文章でメモしたか、もしくは何も残さなかったと思います。当然、後から思い出す上でとても役に立ちました。

また、私は習慣的に日記を書いています。そして、これまで文章だけで書いていた日記に、簡単な挿絵のようなイラストを交えるようになりました。まだ始めたばかりの試みですが、言葉では十分に表せない自分の気持ちを補足してくれるのでは、という期待をしています。

アイデアを生む力になりそうな予感はある

この2ヶ月で、デッサンを通して何か新しいアイデアを生み出したわけではありません。

しかし、物事をより詳しく、違った角度から見るようになりました。そして、ふと気になったものを、絵という形で記録したり、記憶したりすることも増えました。

「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせである」とよく言われます。

もしそうなら、絵を描くことは、アイデアの材料となる要素をよりよく集める方法の一つなのかもしれません。

絵を描くことがどのようにアイデアにつながるのか。もうしばらく観察を続けてみようと思います。

今考えていること

上に書いたとおり、絵を描くことでアイデアにつながりそうな予感はあります。そのため、個人的には、もう少しデッサンを続けてみたいと感じています。

また、「旅行先で絵を描く」など、別のことと組み合わせることで、新しい楽しみが増えるかもしれません。

ひとまず今回の実験はここまでですが、これからも絵についての実験やアイデアがあれば、ここに書きたいと思います。

この記録が、次のだれかの実験のきっかけになれば、うれしく思います。